安河内哲也

今回は E-CAT (国際英語会話能力検定) の開発に、日本からの代表の1人として参加した安河内哲也氏にお話をうかがいました。安河内氏は、これまでも様々なスピーキングテストの普及に関わってきましたが、E-CAT に関しては、その経験を活かし、立案・設計の段階から、米国ロサンゼルスの BES にて、開発に参加しました。開発室においては、ノンネイティブスピーカーの英語学習の視点を反映させる様々なアイデアを提案されたそうです。

E-CAT の構想はどのようにして生まれたのですか?

はい、やはり一番の理由は、世界中の関連組織からの要請ですね。世界中で、英会話が教えられているのですが、初中級者の英会話レベルを測る物差しがない。日本には、英検がありますが、これはスピーキングに特化したものではない。初中級者からのスピーキング力を伸ばすための目標となり得るテストが必要とされていたのです。もちろん、BES の本部もそれに対応しようとしていたのですが、どうしても米国主導でテストを作成すると、ネイティブ目線の難しいものになってします。そこで、アジアや中南米、中東などから、ノンネイティブの英語話者が開発アドバイザーとして参加することになりました。

最初はどのような意見が出ましたか?

BES では iTEP という4技能試験を運営しているのですが、このテストは、アカデミックな英語の力を試す試験です。多くの大学の入学要件としても使用されているので、レベルはかなり高めです。最初は、このテストのスピーキングパートで事足りるのではないかという話もあったのですが……結局は、全く新しいプラットフォームをゼロからプログラミングして作成することになったんです。

どうしてですか?

これは、多くのノンネイティブからの意見だったのですが、既存の IBT テストは、インターフェイスが堅く、字も小さく、ナレーションも冷たい感じを与えます。また、発話の速度が速いために、初学者に指示が聞き取れない。もちろん、アカデミックなテストではこれは仕方がありません。「測定すること」が最大の目的ですから。しかし、E-CAT はその構想段階から「測定すること」と「英会話の教育現場によい影響を与えること」の2点を両立することを、絶対譲れないミッションとして持っていました。そこで、新たなプラットフォームを作成することになりました。もちろんそれには、10万ドル近いプログラミング費用が必要となったのですが、会長のペリーの一声で、すぐに開発が始まりました。

E-CAT はこれまでのスピーキングテストと何が違うのですか?

まずは、レベルですね。既存のスピーキングテストは、ある程度の基礎力を前提としているものが多く、初学者を門前払いにしてしまうような感がありました。E-CAT は、タスクを易から難に配列し、さらに解答の自由度を高めることによって、初学者でも上級者でも、手応えを感じられるつくりにしました。あとは、なんといっても、フレンドリーなインターフェイスです。ネイティブスピーカーの開発者たちに説明するのは大変だったのですが、私たちノンネイティブが英会話のテストを受けるとき、多くの人はとても緊張します。この緊張をほぐしていく工夫をたくさん取り入れました。

どのように工夫されたのですか?

まずは、インターフェイスに笑顔の女性の静止画を掲載し、その女性がガイドとして友好的に話しかけながら、発話を誘導していきます。途中では励ましの言葉もかけてくれます。また、ナレーションの速度は速くなく、文字も画面に表示されます。これまでの IBT テストは、タイマーの数字に向かって話しかけるだけでした。静止画であったとしても、人間の顔を見て話をすると、ずっと話しやすいことが、受けていただくとわかると思います。その他、インターフェイスを暖色やロゴを用いた柔らかいデザインにしています。日本での実施においては、試験が始まる前の誘導段階から、笑顔の接客や待合場所での音読練習など、試験の前後の運営においても緊張をほぐす仕組みを作っていきたいと思っています。

ネイティブの開発者を説得するのは大変ではなかったですか?

はい、大変でした (笑)。イラク人のシャリフも私と同意見だったのですが、ネイティブにとっては簡単なことでも、外国語として英語を勉強している人にとっては大変難しいことがたくさんあります。その点を理解してもらうために開発者のマリエールやジュマールを日本に招待し、実際に日本企業を訪れて研修の現場を視察してもらいました。実際に見てもらうことで、日本企業での英語の発話レベルがよくわかり、私たちの意見にも納得した様子でした。

スコアはどのように出てくるのですか?

100点満点、1点刻みで出てきます。また、世界標準の CEFR に対応した5点満点の分野別 E-CATスコア、CEFR のバンドもでます。さらに、それぞれの分野に対応したアビリティガイドとスタディガイドも付属します。スコアは1点刻みではなく、CEFR バンドに統一すべきだという声もあったのですが、目盛りが大きすぎると、何回受けても、結果がなかなか変わらないため、やる気の喪失につながってしまいます。そこで、各タスクの評価を統合し、1点刻みで結果を算出するプログラムを作成しました。

今後、E-CAT はどのような場所で使われるようになると考えていますか?

国によって使用方法は異なってくると思うのですが、日本では、まずは企業のニーズが大きいと考えています。実際に、完成以前から、多くの企業の皆様にお問い合わせと、まだかまだかという催促の声をいただいております。ペーパーテストではなく、話すための目標が日本には必要なのだと実感しております。E-CAT は、対象使用言語領域 (TLU domain) をビジネスでもアカデミックでもなく「日常生活全般で使われる英語」としているため、受験者をあまり選びません。将来的には、高校や大学での使用も広がっていくことが期待されます。E-CAT は、そのそれぞれのタスクがそのまま教室でのアクティビティに使用されることを前提として、設計されています。英会話の学習に目標を与え、英語を話すための教育を広めていくツールとして活用していただければ幸いです。

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